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榛名山麓流星電波観測所

観測こと始めお知らせ

はじめに
ふだん天体にあまり興味を持っていない人の中にも、流星群を見たいという人は多いものです。でも、いつもいいコンディションで見られるわけではありません。そういうときこそ電波観測の出番です。HROFFTを使えば天気や昼夜にかかわらず流星観測ができます。私の場合常時複数の周波数で観測をしていますが、もともとは1年の中で流星数がどのように変化するのか、周波数によってどんな違いがあるのかといった単純な疑問から始めたものです。電波観測もいろいろな楽しみかたがありますから、ぜひご自分のスタイルでやってみてください。私自身たいした経験はないのですが、これから始めてみようと考えている方の参考になりそうなことをまとめてみました。浅学のため間違いがありましたらお許しください。
電波観測について
高速で地球に突入してくる宇宙のちりが上空100kmほどにある薄い大気と衝突すると高温となって電離し、その飛跡が一時的に電波を反射する状態となります(エネルギーの大きなものは流星として見える)。すると、通常受信できない遠方のVHF帯の電波(30MHz〜300MHz)がその瞬間だけ受信されます。これを流星エコーといいますが、このエコーによって流星の状況を調べるのが流星電波観測です。現在はほとんどの場合専用の自動観測ソフトである「HROFFT」が使われています。また、観測に利用可能な出力で長期間安定して出ている電波としては、50MHz帯のアマチュア無線のビーコン、76〜95(海外は87〜108)MHzのFM放送、108〜118MHzの航空用VORくらいしかないのが実状です。以下にそれぞれの特徴を書いてみましたので、観測する周波数を決める際の参考にしていただければと思います。
HROについて
アマチュア無線を使った電波観測をHROといいますが、その中でも1996年からの長い歴史を持つのが50MHz帯の流星電波観測用ビーコンによるHROです。ボランティアの皆さんの努力で長年送信設備が維持されてきたことや、1999年に大川一彦さんが誰でも簡単に使えるHROFFTを開発されたことで多くの人がHROを体験し、たくさんの研究実績があります。現在は福井県立大学(福井県越前市)から53.755MHz(水平偏波 50W CW)の電波が常時発射されています。周波数が低いのでエコーは比較的多く国内であれば概ね受信可能ですが、このバンドはノイズを拾いやすいのも特徴です。(私の場合、近くの高圧線からのノイズがひどくなりHROを諦めました)。また、簡易なアンテナとして2エレメントのHB9CVがよく使われていますが、それでも横幅が約3mあるので設置等がちょっと大変かもしれません。現在アマチュア無線をされていて50MHz帯のアンテナや機材をお持ちならばまずHROを試してみるのがよいでしょう。
FROについて
FM放送を利用した電波観測(FRO)1970年代に始まりました。初期の方法は、FMラジオをふだん聞こえない遠くの局の周波数に合わせておき、流星が流れた瞬間に反射されて聞こえた音を数えるというやり方です。その後チューナーの回路から信号を取り出し、ペンレコーダーで記録するという方法に発展していきましたが、いずれにしても長期間の観測は難しかったようです。80年代に入りFM局が増えてくると混信のためにこうした方法でのFROが次第に困難になり、50MHz帯におけるHROへの移行が進みました。ところでHROとともに開発された自動観測ソフトであるHROFFTは、FROではあまりうまく働きません。それは、FM放送が周波数変調であるため、電波が広い周波数帯域に拡散しており、CWモードやSSBモードで受信することを前提に作られているHROFFTではエコーをうまく捉えられないからです。ただ、アナウンスや音楽などの音が小さくなる部分では、無変調やそれに近い状態になって電波が基本周波数(搬送波)に収束し、運良くその瞬間に流星が流れるとCWモードやSSBモードでもエコーが記録されます。つまり、無音の状態が多いか少ないかによって記録される流星エコーの数が左右されるわけです。HROFFTを使って通常のFM放送でエコーを記録すると、番組内容によってエコー数が違うことがよくわかります。また、民放FM局では月曜日の早朝などに放送休止の時間帯を設けている局が多いです。休止時間帯といっても全く電波が出ていないわけではなく、キャリアの状態になっていることがあって、月曜の早朝などは様々な局の電波が干渉し、すさまじい状態になります。こうした点からも時間ごとの正確なエコー数の変化を見るにはあまり向いていません。(もちろん増加することはわかります)
現在のFRO
ところで、観測システムのところで述べたように、FM放送帯で安定した無変調の電波が見つかったことで状況が大きく変わりました。韓国から24時間発射されている89.4MHz、92.5MHz、92.8MHz、93.6MHz、97.0MHz、97.8MHz、102.3MHz、103.7MHzなどの電波を利用すれば、おそらく国内どこでも連続波によるFROが可能だと思われます。ただし、周波数によって(89.4MHzなど)は時間帯によって北朝鮮と韓国の電波によるエコーが同時に受信されて通常よりエコーが多くなったり、電波の出力が不安定なためにエコーが突然なくなったり減少したりする場合もあります。なお、近畿地方では89.4MHzのFM京都、九州地方では92.8MHzの南日本放送が混信したり、その周辺(500km以内)ではこれらの航空機エコーが入ったりする可能性があります。また、同一周波数の局による混信妨害だけでなく、近接する周波数の局のからの妨害(かぶり)や月曜日の未明などは周波数の異なる強力な2局による相互変調妨害なども見られます。「日本と周辺のFM局一覧」を参考にしてできるだけこうした影響のない周波数を選ぶようにするとよいでしょう。
参考までに韓国から発射されている電波によるエコーの実測値を示します
(2021年11月 日本アンテナAF-4水平西向き)

89.4MHz 1519/day (2日間平均)
92.5MHz 1100/day (2日間平均)
92.8MHz 1021/day (2日間平均)
93.6MHz 316/day (6日間平均)
97.0MHz 161/day (2日間平均)
97.8MHz 144/day (2日間平均)
102.3MHz 18/day (2日間平均)
103.7MHz 58/day (2日間平均)

(2024年1月11日 残念ながら韓国のFM無変調波は全て停波しました。今後FROを試みるには、国内の混信がない95〜108MHzで韓国・中国・ロシア等の放送波を利用するのが最善でしょう。)
FMアンテナは50MHz用に比べると一回り小さく安価です。ベランダなどでも工夫すれば設置可能でしょう。同軸ケーブルも75Ωだとホームセンターで安く手に入れられます。そうした点で、これから流星電波観測をやってみる方には上記の周波数でのFROをお勧めしたいと思います。現在販売されているFMアンテナは95MHzまで対応しているものがほとんどなので、89.4MHzから順に受信してみてうまく受信できる周波数を選ぶとよいでしょう。FROの弱点は5月~8月にかけて発生するEスポです。特に6月、7月は毎日のようにEsが発生して中国方面のFM局の混信で数時間受信ができなくなります。こればかりはどうにもなりません。


VORについて
VORは航空機に対して方位情報を送信している地上無線局で、電波はFM放送と同じ水平偏波で無指向性、出力は100W〜200Wです。日本国内には80カ所ほどのVOR局があるので、利用できるVOR局が複数見つかるのが利点ですが、中には運用時間が日中に限られている局もあります。詳しくは「日本と韓国のVOR局一覧」をご覧下さい。VORの電波はFM放送に比べて周波数の管理がかなりルーズで、400〜500Hzずれていることも珍しくありません。また、概ね月に1回送信機の切り替えが行われており、その際に周波数のずれが目立つ局もあります。そのためVORを受信する場合はCWモードよりも帯域の広いSSBモード(USB)を使う方がよいでしょう。さらにVORは設備の更新や縮退計画等によって周波数が変更になったり廃止になったりすることもあるので、全く受信できない場合はAISで最新の運用状況や周波数等を確認してください。VORは出力があまり大きくないことや周波数が高いためにエコーが少ないことが弱点ですが、FROのようにEsによる妨害をほとんど受けないというメリットもあります(ただし環境によってはノイズを良く拾います)。FMアンテナでもある程度VORの電波を受信できるので、FROをやってみてどの周波数もうまくいかない場合最後の手段としてチャレンジしてみるといいでしょう。その後FMアンテナをVOR用に改造すれば間違いなくエコーは増加します。杉本さんのページを参考にしたり、MMANAを使えばエレメントの長さの調整だけで専用アンテナに改造することもできます。
送信局との距離
送信局と受信局の距離も大切な要件です。流星が電波を反射する高さは概ね地上から100km前後ですが、送信局の標高を0mとした場合、100kmの高さに電波が到達する範囲は送信局から半径約1200kmの円内になります。受信する側から見た場合も同様で半径1200kmの円内が受信できる範囲になります。従って2400km以上離れると2つの円は重ならず流星電波観測は成立しません。また、距離が大きくなるほど受信できる電波の強さが弱くなり、エコーが減ることになります。これまでのFROの経験では実用的なのは1500km位まで(およそ東京から沖縄)と思われますが、1000kmを越えると夏期は送信局の電波がEスポにより受信されることが多くなります。では近いほどよいかというとこれも問題があって、送信局からの電波が直接受信されてしまったり、飛行機で反射された電波を受信したりして、エコーの判別が困難になります。これを避けるためには概ね500kmの距離をとることが必要ですが、見通しがよい場合はそれ以上でもこうした電波が受信されてしまうことがあります。逆に。間に山などがあると、500kmに満たなくてもこれらから逃れられる場合もあります。基本的には500km〜1500kmの距離にあるできるだけ電波の強い局を選ぶことです。
アンテナについて
電波の受信にはアンテナが必要ですが、必ずしもメーカー製のアンテナでなくても結構受信はできるものです。簡単なのはダイポールアンテナで、これは4分の1波長の長さの電線を左右に伸ばしたものです。89.4MHzであれば波長は3.35mとなりますから、同軸ケーブルの芯線と網線に短縮率を考慮してそれぞれ左右に80cmほどの電線を取り付ければできあがりです。木材やプラスチックパイプなどに固定するといいでしょう。電線と直角方向の電波をよく受信しますので、89.4MHzならば韓国を受信しやすいように東日本の場合南北に張ります。実際これで多くのエコーを受信されている方もいらっしゃいます。面倒と思う方は迷わずメーカー製を購入してください。FMアンテナにはDX、マスプロ、日本アンテナと3社ありますが、私が使った範囲では金属部品が多く使われているマスプロがしっかりしているようです。ただ、エレメントが左右分割式になっているので組み立てが少し面倒です。その点DXアンテナはエレメントが1本で、あらかじめブラケットに通してあるため組み立てがとても簡単です。また、アンテナとの接続がF型接栓なので高所での接続作業も安心です。弱点はブラケットがプラスチックで遊びが多く、エレメントがきちんと揃わないことです。現在各社の5エレメントFMアンテナは76〜95MHz対応になり、性能的には十分ですが、屋根馬にしっかりとした支柱やステーで固定する必要があります。その点日本アンテナのAF-4は、各エレメントに短縮コイルが入っておりコンパクトなのでベランダにも取り付けられそうです。当然ですが小さいので利得は少なめです。2エレメントのアンテナも各社から出ていて扱いやすそうですが、高い周波数でのゲインはあまり期待しない方がいいでしょう。


アンテナの設置
アンテナはできるだけ周囲の建物などから離し、見通しのよいところに設置するようにするのが基本です。また、通常はアンテナの向きを送信局の方向にしますが、多少向きがずれても混信が少ない方向を優先する方がいい結果につながると思います。特に電波が密集して干渉し合っているFMでは向きや設置場所をわずかに変えただけでも受信状態は大きく変わりますので、周波数が決まったらアンテナの位置や方向を少しずつ変えてみると混信の少ないポイントが見つかるでしょう。(プロもそうしています)。また、ケーブルをどう引き込むかで悩む方も多いと思いますが、既設のエアコンの穴を利用するとか、すき間ケーブルといったものもあります。また、使われなくなったVHFのテレビの配線やアンテナを活用していらっしゃる方もいます。また、同軸ケーブルの受信機側には普通F型接栓をつけて接続するのですが、次で紹介するSDRなどの接続端子はほとんどSMA型と呼ばれるものでインピーダンスは50Ωです。本当はインピーダンスが違う場合は何らかのマッチングが必要なのですが、受信専用の場合この程度の違いはあまり心配はありません。それよりもF型コネクタはセンターピンがなく、同軸ケーブルの芯線で代用しているので、何回か取り外しをしていると芯線が曲がって接続不良になることがあるので注意しましょう。いずれにしてもF型をSMA型に変換するアダプタが必要になります。これもアマゾンで簡単に手に入りますが結構不良品があるので気をつけてください。
パソコンについて
とりあえず試してみるのならば現在お使いのものでいいと思いますが、継続して観察するのであれば専用のPCが必要になります。パソコンも色々ありますが、ノートパソコンは夏にはかなり熱くなり、寿命が間違いなく縮みます(私はノートパソコンを実際にだめにしました)ので、できれば小型のデスクトップタイプをお勧めします。Windows7以降でメモリが8GBあれば大丈夫でしょう。Windows10はほぼ毎月アップデートがありますから、勝手に再起動しないように設定しておく必要があります。また、パソコンの内蔵時計は1日に数秒のずれが生じるので、毎日1回は自動で時刻合わせするように設定しましょう。(Windowsの初期設定は7日)。Windows10の場合、スタート→Windows 管理ツール→タスクスケジューラと進んで、新しいタスクとして設定してください。Windows7などはフリーソフトを使ってください。
SDRについて
現在は安価にオールモードオールバンド受信機が実現できるSDRの時代になっているので、これを前提にお話ししたいと思います。SDRはUSB端子に差し込んで使用するドングルと、パソコンにインストールするソフトから成り立っています。SDRドングルは、安いものではアマゾンで3000円〜5000円くらいです。RTL2832U+R820T2という形式で、できればTCXO という温度補償タイプがいいでしょう。私はNesdr Smartを使っています。SDRソフトにもいろいろな種類がありそれぞれ特徴がありますが、インストールや基本的な設定については詳しいページを参考にしてください。いずれのソフトを使う場合でも、AGCがONになっているとロングエコーが正確に捉えられないので必ずOFFにしておくことが大切です。私が使っているSDRSharpは使いやすいと思いますが、長時間稼働していると操作ができなくなったり、混雑したFM放送では受信周波数のカーソルを置く位置によって受信レベルや混信の状況が変わるという特性もあります(うまく使うとよい結果も出せます)。また、HROFFTはSSBモードかCWモードで使いますが、CWモードだとCW Shiftを900Hzに設定すれば周波数を調整することなくHROFFTの中央にエコーを持ってくることができ、さらに帯域幅が300Hzとなりエコーの縦の線の長さが制限されて見やすくなるので便利です。また、ファイルサイズも小さくなります。ただ、SDRSharpのカーソルの選択ボタンをセンタリングモードの状態で89.4MHzなどの切りのいい周波数にすると、CWモードにしたときにHROFFTの画面でCW Shift周波数付近の受信レベルが下がって黒くなる「中抜け」現象が発生することがあります。この場合は、カーソルの選択ボタンをセンタリングでなく、画鋲マークにして画面をドラッグし、カーソルを中央からずらすとこの現象を回避できます。なお、前述した混信の影響を避けるためにはカーソルを画鋲マークにしてドラッグし、スペアナ画面の谷の部分に目的の周波数が来るようにすると混信の影響が少なくなります。ここは試行錯誤してベストな位置を探ってみてください。
また、SDRSharpの設定で、frequency correction(ppm)を使用して周波数を調整すると、本来のエコーの上下にノイズが出ることがあるといわき市の桂さんから指摘がありました。周波数を調整する場合は、frequency correction(ppm)を使わずに、周波数表示を直接操作して設定するのがいいようです。

初めてめて電波観測をする場合は、まず生で流星エコーを聞いてみましょう。具体的にはCWモードで周波数を合わせ、CW Shiftを900Hzにします(SSBの場合はモードをUSBにして周波数を900Hz下の89.399 100MHzに合わせます)。すると流星が流れたときに「ポーン」「ピヨヨヨヨーン」といったかわいい音が聞こえると思います。これが流星のエコーです。これを試すにはできるだけ流星が多い時間帯を選ぶのが大切です。具体的には午後よりも午前中が多く、冬〜春より夏〜秋が多くなります。エコーの少ないVORなどで新たな電波を見つけるときなどは大切なポイントです。
HROFFTについて
HROFFTは本格的な観測には必須の観測ソフトですが、これにはいくつかのバージョンがあります。私は小川さんを通して制作者の大川さんからHROFFTを送っていただきましたが、配布を希望する場合は小川さんに連絡してみるのがよいでしょう。なお、現在国内にはHROFFTを直接ダウンロードできるページはないのですが、RMOBのサイトからColorgrammeをダウンロードすると、その中にHROFFT 1.0.0fというバージョンのHROFFTが含まれています。フォントが少し違いますが機能は同じです。なお、HROFFTは開発からかなり年月が経っており、Windows7までは問題なく動いていましたが、Windows10でそのまま動かすとは私の場合2~4週間ほどで3台の観測用PCのHROFFTが止まってしまいます(それでもHROFFTはすばらしいソフトだと思いますが)。対策としては互換モードでWindows XP SP SP3にするとかなり改善されることがわかりました。HROFFTの代替としてはMROFFTがありますが、印象としてはHROFFTよりも若干ノイズが多く、エコーのカウントもHROFFTほど正確ではない感じがします。なお、HROFFTにAF出力を読み込ませるには、通常PCのオーディオ出力端子とマイク端子をオーディオケーブルでつなぐのですが、これだとマイク入力が飽和する可能性が高くなり、ケーブルも邪魔です。そこでVB-Cableというソフトを使ってPCのサウンド設定で直接HROFFTに音声が渡るようにするととても便利です。また、HROFFTでは受信レベルの設定が大切です。受信レベルがその都度変わってしまうと、せっかくのデータも比較できなくなります。私はSDRSharpのRFゲインとPCの音量コントロールは最大、HROFFTのシグナルレベルは15に全て固定し、SDR#の音量ボリュームのみ89.4MHzの場合は42dBというように設定しています。どうしてもエコーがたくさん入るようにぎりぎりで設定しがちですが、ノイズが入ることは避けられないので、無理のないところにレベルを設定するのが吉です。
データについて
HROFFTで観測を始めたらとりあえずエコーを時間ごとにカウントしてみましょう。朝方に多く夕方少ない傾向(日周変化)が見られたり、その中に時たまロングエコーが見つかったり、流星群の時期にエコーが増えたりすればればうまく流星エコーを受信できていることになります。といっても私は毎日144枚の画像をこつこつカウントする自信がなく、手抜きの自動カウントを目指してRMOBやノイズの少ないFROの方向にいくことになりました(もちろんノイズが入ればマニュアルカウントですが)。現在国内では杉本さんと小川さんが主要な流星群についてエコーの集計を行い、結果をまとめて公表されていますので、安定してデータが取れるようになったら、データをまとめて送ってみてはどうでしょうか。自分のデータが役に立てばなおうれしいものです。国内のデータの集計にはHROviewや、HROReportといった集計ソフトを使いますが、これらのソフトを使うことで決まった報告様式のCSVファイルのデータが作成できます。私の場合はRMOBのデータを使ってもらっているので、これらのソフトについてはあまり詳しくありません。詳しい使い方については山本さんのページをご覧下さい。
LIVEについて
杉本さんや小川さんのページには国内各地の観測所のHROFFTのライブコーナーがあります。自分の画像と各地の画像を比較すると色々と発見がありますし、それらを見てコメントの交換などもできます。また、流星カメラの画像との同時流星の検出に使われている方もいらっしゃいます。LIVEには小林さんが作成されたview121b.cgiとCGIが使えるサーバーが必要ですが、さほど難しくはありませんのでチャレンジされてみてはどうでしょうか。具体的な方法については小林さんや小川さんのページを参考にされるとよいと思います。
RMOBについて
私が流星電波観測を本格的に始めようと思ったきっかけになったのがこのサイトでした。何よりも素晴らしいのは毎時間のエコー数がカラーグラフで表示されること、条件がよければ自動観測で手間いらずだということです。現在は世界各国に50カ所ほどの観測地点があり、データが10分ごとに更新されています。過去のデータも20年以上前にさかのぼって見ることができますし、RMOB Surveyのようなグラフツールもダウンロードすることができます。また、各観測サイトのRMOBデータはいつでもダウンロードができるので、それを利用して杉本さんや小川さんは日本では観測できない時間帯を含めた流星群の集計を行っています。現在日本からアップロードしているのは3人だけ(2021年9月現在)ですが、過去の記録を見ると多くの方が参加されていたようです。個人的にはまた増えてくることを期待したいです。


RMOBの設定
RMOBにアップロードするためのソフトであるColorgrammeのインストールと設定については、杉本さんのページに詳しく紹介されています。私もそこを参考にしながら設定したのですが、少し補足的な説明をしておきたいと思います。まず、RMOBではデータを全てUT(世界時)で処理しますので、ColorgrammeやHROFFTはUTで時刻設定されたPCで実行しなければなりません。これは日付と時刻の調整から簡単にできます。それができたらSDRSharpとHROFFTを起動して数時間分のHROFFTファイルを作っておきます。その際、ファイル名がABYYMMDDHHMMの12桁になるようにHROFFTのHeaderファイルを編集しておいてください(ABは任意です)。次にColorgrammeのインストールですが、RMOBのトップページの下の方からダウンロードしてください。Cドライブに適当な名前のフォルダを作ってその中にインストールするのがいいでしょう。できたらColorgramme.exeのショートカットアイコンをデスクトップに表示しておきます。
Windows10ではColorgrammeを起動しても正しく動作しません(送信ができない、表示がおかしい)。そこで、Colorgrammeのショーカットアイコンを右クリックし、プロパティ→互換性と進み、互換モードをWindows7にします。あらためて起動するとObserverの項目を入力するようにメッセージが表示されますから、各項目を入力してください。このときデシマル表示の経度、緯度を入れ忘れるとデータはRMOBに送信されるのですがカラーグラフが表示されないので注意が必要です。Colorgrammeを立ち上げると、左上にLiveの文字がありますからそれをクリック、読み取り項目の最初にHROFFTがあるので、それをクリックしてダイアログをOKし、HROFFTファイルのあるフォルダを選択して、その中の任意のHROFFTファイルをダブルクリックすると読み取りが始まります。するとすぐにインターネット接続についてのダイアログが出るので、OKをするとカラーグラフが表示されます。上のタブからInternet FTP Transferをクリックすると、インターネット接続の選択(no connectionになっている)と、startボタンとRMOBグラフが先ほど入力した項目とともに表示されているはずです。
でもよく見るとグラフが枠の中にうまく収まっていないことに気がつくでしょう。原因はわかりませんが、Colorgrammeを日本語のWindowsで動かすとどうしてもこのようになってしまうようです。この対策は杉本さんに教えていただきました。やり方は、デスクトップ上で右クリックするとディスプレイ設定の項目が出てきますので、それをクリックするとディスプレイの項目の中頃に「表示スケールの詳細設定」という項目があります。そこのカスタムスケーリングで104%を指定します。OKして一旦ログオフすると、次にRMOBグラフを見たときにはグラフがきちんと収まっているはずです(フォントが少し大きくなってグラフに多少かかりますがやむを得ません)。杉本さんに感謝です。これできちんと表示されることがわかったら、先ほどのインターネット設定で適当な送信時間を指定し、スタートボタンでデータをRMOBに送ってみましょう。RMOBサイトの一番上に表示されているはずです。(新しいデータが上に来るので)、これでうまくいかなかったときは、Colorgrammeのアイコンを右クリックして「管理者として実行」を試してみてください。また、ノイズが入ったときの処理などについては「観測システム」のページの「メンテナンス」を参考にしていただければと思います。
最後にRMOBを実行しているPCでHROFFTのLIVEもやりたいという場合は(私のように)、杉本さんの作成されたTBasicプログラムが必要です。このプログラムはUTで表示されているHROFFTのファイルをもとにJSTに変換したCGI用のファイルを作成し、それぞれを決まったフォルダに保管する(オリジナルは一定時間後UTのファイルを削除する)という仕事をします。私のようにフォルダ名をオリジナルとは違うものにしたい場合や、削除をしないで保存したい場合などはプログラムを手直しをする必要がありますが、そう難しくはありません。また、TBasicはバージョンが上がっており、私の場合杉本さんのページからダウンロードしたプログラムを実行するとにエラーが出てしまったのですが、エラーの場所でTBasicが止まるので素人の私でもわずかな訂正で解決できました。わからない点があればお尋ねください。楽しみながらやりましょう。
おわりに
思いつくことを書いていったら文字ばかりになりわかりにくかったかと思います。今後少しずつ加除訂正をしていきたいと思いますので、お気づきの点があればご連絡ください。 (2022年9月 一部改訂)